挑戦を諦めさせない。
We stand with you—every challenge, every step.
Who we are
大手企業に滞留する資金をスタートアップに届け、新産業を創出する。産業と資本の新陳代謝を加速させる。
新しい産業をつくろうとする挑戦者と、その成長を支える資金の出し手。両者の間には、言語も論理も異なる深い溝があります。
JSGは、会計・税務の専門性だけでなく、VC/CVCとしての投資実務経験を持つプロフェッショナルファームです。
投資家と起業家の間に立つ翻訳家として、双方の視点を深く理解し、適正な資金循環とガバナンス構築を支援します。挑戦者の意志と情熱を、力強く、粘り強く後押しすること。それが私たちの使命です。
Case
支援事例
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ファンド・CVC支援
大手インフラ会社
CVC設立〜投資テーマ設定〜運用・モニタリングまでの伴走支援事例
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ファンド・CVC支援
独立系VCファンドのファンドマネージャー業務支援事例
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ファンド・CVC支援
上場ベンチャーキャピタル子会社
ファンドアドミ実務支援事例
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ベンチャー・スタートアップ支援
モバイルシェアリング企業 資金調達〜IPO伴走支援
CVC投資先への支援から上場達成まで。事業フェーズの変化に伴走する長期パートナーシップ。
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ベンチャー・スタートアップ支援
株式会社ハイレゾ プレシリーズC 13億円 資金調達
CFO不在の調達局面で、FAとして資本政策の再設計から投資契約までを一気通貫で支援。当初目標の2.6倍となる13億円の調達を実現。
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ベンチャー・スタートアップ支援
株式会社iimon シリーズA資金調達
厳しい市場環境下で、投資家に事業の真価を伝えるストーリーを構築。当初想定を上回る資金調達を実現
Feature
JSGが選ばれる理由
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01.資金の出し手と受け手
双方の構造を熟知した資本戦略を策定資金調達やファンド運営の戦略を描くだけでなく、実際のドキュメンテーション、投資家との交渉、ファンド運営の実務まで踏み込めるのがJSGの特徴です。
大手監査法人での監査経験とCVCでの投資実務経験で培った、調達したい企業の事情と資金投資をしたい企業側の論理の双方を理解した上で、最適な資金調達、ガバナンス構築を実現します。 -
02.大企業とスタートアップの断絶を埋める高度な翻訳能力
投資を検討する大企業(ファンド・CVC)と資金調達を検討するスタートアップの間には、経験や立場の違いからくる深い溝があります。プロシェアリング等の外部人材では埋めきれないこの溝を、私たちは翻訳によって接続します。スタートアップの熱意を大企業の決裁ラインに通るロジックへ、大企業の厳格な要求をスタートアップが実行可能なアクションへ。単なる仲介ではなく、双方の合意形成を成立させるための調整力こそが、JSG最大の強みです。
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03.ファンドの組成・戦略から実務・管理までを一気通貫で支援可能
VCや投資会社は投資が専門であり、ファンド自体の立ち上げやバックオフィスのコンサルティングは行いません。一方で、一般的な会計事務所は事務代行に留まります。JSGは、CVC/ファンドの立ち上げ(戦略策定・LP対応)から、日々の運用、投資実行、そして会計監査対応までをワンストップで支援できるファームです。ファンド運営の裏側を知り尽くしているからこそ、手戻りのない持続可能な成長基盤を構築します。
Column
お役立ちコラム
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コラム
ストックオプションとは?税制適格の要件と発行量の設計を実務から解説
「優秀な人材を採用したいが、現金報酬だけでは競争しにくい」——成長段階のスタートアップにとって、ストックオプションは将来の企業価値向上と報酬を連動させる選択肢の一つです。ただし、税務要件、会社法上の発行手続、行使条件、退職時の取扱い、潜在株式による希薄化を整合させなければ、付与対象者に想定外の課税や行使負担が生じるおそれがあります。発行後の取得・消却・失効には、発行要項や付与契約、会社法上の手続等の確認が必要です。この記事では、ストックオプションの仕組み、税制適格と非適格の違いと要件、2023年の通達改正によるセーフハーバールール、適切な発行量、そして実務でよくある失敗までを、投資実務と会計の両面から整理します。 なお、ストックオプションの設計や資本政策のご相談をご希望の方は、JSGのお問い合わせよりご連絡ください。 https://corp-jsg.com/contact-2/ ストックオプションとは?あらかじめ決めた価格で自社株を買える権利 ストックオプションとは、会社の役員や従業員が、あらかじめ定められた価格(権利行使価額)で自社の株式を購入できる権利のことです。法律上は新株予約権にあたります。仕組みは単純です。権利を付与された時点の株価が1,000円だったとして、その価格で購入できる権利を持っておく。数年後に企業価値が上がり、株価が10,000円になったところで権利を行使すれば、1,000円で株式を取得できます。差額の9,000円が、権利を持っていた人の利益になります。 スタートアップにとっての意味は明確です。現金を支出せずに、将来の企業価値向上を報酬として約束できる。資金力に乏しい成長段階の企業が、大企業と人材獲得で競争するための重要な手段になります。 潜在株式として資本政策に組み込む必要がある ここで押さえておくべきは、ストックオプションが将来的に株式に変わる「潜在株式」であるということです。発行済株式だけを見て持株比率を管理していると、ストックオプションが行使された時点で、想定より持分が薄まっていたという事態が起こります。資本政策では、発行済株式に潜在株式を加えた潜在込み比率で株主構成を把握しておく必要があります。 税制適格ストックオプションと非適格の違い ストックオプションで最も重要な論点が、税制適格かどうかです。ここで課税のタイミングと税率が大きく変わります。 課税のタイミングと税率が変わる 税制非適格の場合、権利行使時の経済的利益は、付与者と権利者の関係や付与の原因に応じて給与所得、退職所得、事業所得又は雑所得等として課税されます。役員・従業員が職務の対価として付与された一般的なケースでは給与所得となり、累進税率が適用されます。株式売却時には、原則として売却価額と取得価額との差額が譲渡所得の対象です。問題は、権利行使の時点ではまだ現金が入っていないことです。未上場株式を取得しただけの段階で、多額の所得税を負担しなければならない事態が生じ得ます。 税制適格の要件を満たす場合、権利行使時の経済的利益への課税は繰り延べられ、株式売却時に譲渡所得として課税されます。上場株式等に係る譲渡所得等の税率は、通常、所得税・復興特別所得税・住民税を合わせて20.315%です。個別の課税関係は居住者区分や取引状況等により確認が必要です。課税が売却時まで繰り延べられ、税率も大幅に低くなる。この差は、受け取る側の手取り額を大きく変えます。 税制適格の主な要件 税制適格の適用を受けるには、租税特別措置法29条の2に定める要件をすべて満たす必要があります。主な要件は次のとおりです。 要件内容付与対象者発行会社および子会社の取締役・執行役・使用人(大口株主とその特別関係者を除く)、一定の要件を満たす社外高度人材権利行使期間付与決議の日後2年を経過した日から10年を経過する日まで(設立5年未満の非上場会社は最長15年)権利行使価額契約締結時の1株あたりの価額(時価)以上年間の権利行使限度額原則1,200万円(設立5年未満は2,400万円、設立5年以上20年未満で非上場等は3,600万円)譲渡制限新株予約権の譲渡が禁止されていること保管委託等証券会社等への保管委託、または発行会社自身による株式管理無償発行金銭の払込みをさせないで発行されること 見落とされやすいのが付与対象者の範囲です。監査役は税制適格の対象になりません。「役員だから大丈夫だろう」と考えて発行すると、後から要件を満たさないことが判明し、受け取った側に想定外の税負担が生じます。監査役にインセンティブを付与したい場合、その分は税制非適格として設計する必要があります。実際のIPO事例でも、取締役・従業員には税制適格、監査役には非適格と、使い分けている例が見られます。 2024年度改正での緩和 2024年度税制改正により、実務上重要な緩和が行われました。 年間権利行使限度額の引上げ:従来一律1,200万円だった上限が、設立5年未満で2,400万円、設立5年以上20年未満で非上場または上場後5年未満の会社は3,600万円まで引き上げられました。レイター期の人材確保に対応したものです。 保管委託要件の緩和:従来は証券会社等への保管委託が必須でしたが、発行会社自身による株式管理スキームが認められました。M&AをEXITとする場合の実務的な障害が解消され、IPOとの中立性が図られています。 社外高度人材の範囲の拡大:国の認定計画に基づいて社外の専門家等に付与する仕組みについて、国家資格保有者等に求めていた3年以上の実務経験の要件が撤廃され、大学の教授・准教授や、一定の非上場企業で役員等を1年以上経験した人材なども対象に加わりました。認定を受けられる企業の要件のうち、資本金5億円未満・従業員900人以下という要件も廃止されています。 セーフハーバールールとは?行使価額を低く設定できる仕組み 税制適格の要件のうち、実務で最も悩ましかったのが「権利行使価額が契約締結時の時価以上」という要件です。資金調達を重ねて企業価値が上がった会社では、直近ラウンドの株価が高騰しています。その株価を基準に行使価額を設定すると、ストックオプションのインセンティブとしての価値がほとんど失われてしまいます。 通達改正の内容 この問題に対し、2023年7月、国税庁が法令解釈通達を改正しました。2023年の通達改正では、税制適格ストックオプションの権利行使価額要件に用いる契約時の1株価額について、一定の条件の下で財産評価基本通達の例により算定する方法が示されました。直近の種類株式による資金調達価格を常にそのまま用いる必要はありません。ただし、会社・株主区分・権利内容に応じた調整と算定資料の保存が必要です。 したがって、資金調達価格と税務上の契約時株価が異なる場合はあり得ます。ただし、純資産額だけで機械的に税制適格となるわけではなく、通達の要件、株主区分、種類株式の権利差、算定時点等を個別に確認します。 実務へのインパクト この改正により、資金調達価格とは別に、通達に沿った契約時株価を検討できる場面が明確になりました。ただし、赤字や債務超過であることだけを理由に1円とできるわけではありません。いわゆる1円ストックオプションには税制非適格の株式報酬設計も含まれるため、「1円=税制適格」と理解しないことが重要です。適切に要件を満たせば、行使価額の設定可能性が広がる場合があります。一方で、付与契約、年間権利行使限度額、行使期間、株式管理、付与対象者等の全要件を満たさなければ税制適格にはなりません。 ストックオプションはどのくらい発行すべきか 適切な発行量は、業種・ビジネスモデル・ステージによって変わります。発行量に一律の法定上限や上場基準上の固定値はありません。採用計画、役割別付与、既存株主の希薄化、次回調達時の投資家要請、上場時の潜在株式比率と需給を資本政策表で試算し、会社ごとに決めます。 資本集約的でない業種、たとえばソフトウェアなど人材が競争力の源泉になる会社では、従業員へ厚く付与するケースもあります。逆に、資本集約的な事業では、あまり多くを付与しない設計が合理的な場合もあります。重要なのは、最初にプールを確保しておき、採用に応じて配分していく設計です。枠を決めずに個別対応を繰り返すと、後になって枠が足りない、あるいは出しすぎたという事態を招きます。 ストックオプションでよくある失敗 発行しすぎて資本政策の見直しを迫られる 最も深刻な失敗が、大量発行です。これは、当初に大量の株式を外部に発行しすぎた結果、「安定株主の持株比率が低すぎる」という資本政策のミスに気づいた場合に起こりがちです。その対策として、創業者(社長)の持分を確保するために、発行済株式数の数十%といった大量のストックオプションを発行する、という手段が採られることがあります。ただし、付与決議日に発行済株式の3分の1を超えて保有する大口株主(未上場会社の場合)とその特別関係者は、税制適格の付与対象外です。創業者がこれに当たる場合、その分は税制非適格として設計することになります。 投資家にしてみれば、自分の持分が薄まることになるため、当然いい顔はされません。ただし、あまりに社長の持株比率が低いとインセンティブが弱まってしまうため、やむを得ず応じるケースもあります。潜在株式が大きい場合、既存株主の希薄化、上場時の需給、権利行使資金、会計上の株式報酬費用、失効・取得条項等が主幹事証券会社や投資家との重要な協議事項になります。特定の比率だけで上場可否は決まりませんが、付与目的と配分根拠を説明できない過大な発行は、資本政策の見直しを求められる要因になり得ます。 計画性のない発行で行使できなくなる もう一つの典型的な失敗が、発行のタイミングを逃すことです。創業初期は、目の前の製品やサービスの開発に没頭しており、ストックオプションにまで気が回らないことが少なくありません。ベンチャーキャピタルからのアプローチが始まった段階で、「そういえば役員や従業員に何も渡していなかった」と気づくケースは非常に多く見られます。 問題は、この段階ではすでに企業価値が上がっていることです。仮に企業価値が数億円に評価された後にストックオプションを発行すると、行使価額もそれに応じて高くなります。前述のセーフハーバールールを使えば純資産額等を基準にできますが、それでも一定の資金は必要です。企業価値が大きく上がった後では、行使に必要な資金が数百万円規模になることもあり、従業員が行使できないという事態が起こり得ます。上場前であれば金融機関も貸してくれるとは限りません。 さらに、直前のストックオプション発行に対しては、投資家側もいい顔をしません。役職員に行使価額1株1万円でストックオプションを付与した2週間後に、投資家が1株50万円で出資する。評価方法や株式の権利内容の違いを含めてこの価格差を合理的に説明できなければ、投資家は投資委員会で説明がつきません。 上場直前期の発行は規制の対象になる 上場前の一定期間に行われたストックオプション付与や株式等の移動には、取引所規則に基づく記録・開示が求められる場合があります。また、基準事業年度(直前事業年度=n-1期)の末日の1年前の日以後に行う一定の第三者割当等では継続所有が求められ、役職員に報酬として割り当てるストックオプションも確約の対象です。ストックオプションの確約期間は通常の第三者割当と異なり、原則として割当日から上場日の前日または権利行使日のいずれか早い日まで(行使により取得した株式は上場日の前日まで)です。社外協力者など、割当時点で会社と直接の雇用関係がない者への付与は取引所規則上のストックオプションに当たらず、通常の第三者割当等として扱われます。対象期間と手続は申請市場、割当日、取引類型等により個別に確認します。これは、上場直前の短期的な利益獲得を防止する観点から設けられた規制です。上場の時期から逆算して、発行のタイミングを計画する必要があります。 ストックオプションの設計は誰に相談すべきか ストックオプションの設計には、税務(税制適格の要件、株価算定)、会社法(新株予約権の発行手続)、資本政策(潜在込み比率の管理)、そして上場実務(開示規制、主幹事証券の目線)が交差します。 とくに専門家への相談を検討すべきなのは、次のようなケースです。 初めてストックオプションを発行する 資金調達を経て企業価値が上がった後に発行したい 行使価額の設定根拠を明確にしておきたい 監査役や社外協力者への付与を検討している 上場を見据えて、発行量とタイミングを設計したい 相談先を選ぶ際のポイントは、税務と資本政策の両方を見られるかです。税制適格の要件だけを満たしても、資本政策全体として持株比率が破綻していては意味がありません。逆に、資本政策上の配分だけを考えても、税務要件を外せば受け取る側の手取りが大きく減ります。 JSGでは、公認会計士として株価算定や監査に携わりながら、投資実務家として資本政策の設計も行ってきた立場から、ストックオプションの設計をご支援しています。ご相談は、お問い合わせよりお気軽にご連絡ください。 ストックオプションに関するよくある質問 いつ発行するのが最適ですか? 企業価値が低い早い段階ほど、行使価額を低く設定でき、受け取る側のメリットが大きくなります。ただし早すぎると、誰に配分すべきかが定まりません。実務的には、最初にプールを確保しておき、採用のタイミングで配分する設計が合理的です。 すでに発行したストックオプションを回収できますか? 発行要項・付与契約に定めた取得条項や失効条件が使える場合、権利者との合意による放棄・取得が可能な場合などがあります。一方的に自由に回収できるものではないため、退職、競業、M&A、上場延期等の取扱いを発行前に具体化し、弁護士・税務専門家と確認します。 監査役に付与してもよいですか? 発行自体は可能ですが、監査役は税制適格ストックオプションの対象者に含まれません。税制非適格としての所得区分は、付与関係や報酬性等を踏まえて個別に確認し、想定される課税時期と納税資金を共有したうえで設計します。 信託型ストックオプションはどう扱われますか? 2023年5月の国税庁の見解により、信託型ストックオプションについては権利行使時点で給与所得課税が生じるとの整理が示されました。既存の信託型を採用している企業では、行使時の源泉徴収への対応や、税制適格ストックオプションへの切り替えを含む検討が必要になるケースがあります。 行使価額はどこまで下げられますか? 一定の要件の下で、財産評価基本通達の例による契約時株価を検討できます。ただし、株主区分、会社規模、種類株式の権利内容、算定時点等により方法と調整が変わり、純資産が小さいことだけで1円にできるものではありません。算定根拠を保存し、個別に税務確認を行います。 まとめ ストックオプションは、現金を支出せずに将来の企業価値向上を報酬として約束できる、スタートアップにとって重要な人材獲得の手段です。設計上の要は、税制適格の要件を満たすことです。付与対象者(監査役は対象外)、権利行使期間、行使価額、年間限度額といった要件を一つでも外すと、受け取る側の税負担が大きく変わります。2023年のセーフハーバールール明確化と2024年度改正により、設計の自由度は大きく広がりました。 一方で、過大な発行は希薄化や上場時の需給に影響し、発行が遅れれば行使資金の問題が生じることがあります。発行後の取得・消却・失効には、発行要項、付与契約、権利者との合意、会社法上の手続等の確認が必要です。資本政策の全体像の中で計画的に設計します。 ストックオプションの設計でお悩みの方は、JSGのお問い合わせよりご相談ください。税務要件と資本政策の両面から、実行可能な設計をご支援します。
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コラム
上場前の資本政策はいつまでに?n-2期からの公開前規制と株主整理を解説
「上場を目指すなら、資本政策はいつまでに固めればいいのか」——IPO準備を始めた経営者が、最初に確認すべき論点です。 大きな株主整理や制度設計は、可能であればn-2期に入る前から着手します。ただし、n-2期以降の増資・株式移動・ストックオプション発行が一律に禁止されるわけではありません。東京証券取引所の公開前規制では、対象取引の記録・開示や、一定の第三者割当等に係る継続所有などが求められるため、申請市場と時期に応じた管理が必要です。 この記事では、上場準備の期の呼び方から、n-2期・n-1期にかかる公開前規制の内容、株主構成の整理、そして逆算したスケジュールの立て方までを、実務の観点で整理します。 上場準備の「期」の呼び方を押さえる IPO準備の議論では、期を次のように呼びます。 呼称意味n期(申請期)上場申請を行う事業年度n-1期(直前期)申請期の1期前n-2期(直前々期)申請期の2期前n-3期(直前々々期)申請期の3期前 上場申請では、原則として直前2期(n-2期・n-1期)の財務諸表等について監査証明が必要です。一般に直前々期(n-2期)から監査対応を進めるため、監査法人の選定やショートレビューはそれ以前に着手します。必要期間は会社の決算・内部管理体制や申請市場により異なるため、主幹事証券会社と監査法人に早期確認します。 資本政策の観点では、上場前の一定期間に行う株式等の移動や第三者割当等について、記録・開示・継続所有等の取扱いを確認することが重要です。 なぜ上場直前の資本異動が規制されるのか 株式公開の公正性を確保する観点から、取引所は、上場予定会社の特別利害関係者等が、上場する可能性が高い時期に株式を取得し、上場後に売却することで短期間のうちに利益を得ることを防止する規制を設けています。 上場により株式の流動性が高まる一方、上場後の株価が上昇するとは限りません。公開前規制は、上場の蓋然性が高い時期に特定の者が株式等を取得し、上場時に短期的利益を得る行為を抑止し、株式公開の公正性を確保する趣旨です。 したがって、上場が視野に入った段階での資本異動は、必ずこの規制を前提に設計する必要があります。 n-2期からの開示規制 特別利害関係者等による上場前の株券等の移動については、取引所規則に基づく記録・保存や、新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)や有価証券届出書での開示が求められる期間・対象があります。対象期間と開示書類は申請市場、取引の種類、相手方により異なるため、最新の新規上場ガイドブックで確認します。 株式等の移動(譲渡・譲受)で開示の対象となるのは、特別利害関係者等が当事者となる取引です。特別利害関係者等には、役員やその親族、大株主、関係会社などが含まれます。ここで実務上問題になりやすいのが、異動の価格です。開示される以上、その価格の合理性が問われます。直前に極端に低い価格で株式を移動していれば、審査の過程で説明を求められることになります。 n-1期からの継続所有規制 n-1期に割り当てられた株式や新株予約権については、さらに強い制約がかかります。基準事業年度(直前事業年度=n-1期)の末日の1年前の日以後に行う一定の第三者割当増資等では、割当を受けた者に継続所有が求められます。期間や対象は割当日、上場日、申請市場、株式・新株予約権の別等により定まるため、「n-1期の全取引」と一括りにせず、個別に取引所規則を照合します。 これは、上場直前に株式を取得して上場時に売り抜けることを防ぐための規制です。役職員に報酬として割り当てるストックオプション(新株予約権)にも所有継続の確約が求められます。確約期間は通常の第三者割当と異なり、原則として割当日から上場日の前日または権利行使日のいずれか早い日まで(行使により取得した株式は上場日の前日まで)です。付与の時期は、インセンティブ設計にも影響します。 上場が近い時期のストックオプション付与では、公開前規制に加え、権利行使期間、税制適格要件、上場時の行使可否、ロックアップ、社内規程等を確認します。付与時期だけで一律に行使・売却の可否は決まらないため、発行要項と申請スケジュールを突き合わせます。 株主構成の整理はいつまでに? 公開前規制とは別に、株主構成そのものの整理も必要になります。こちらも早い段階で着手すべき論点です。 株主の状況を説明できる状態にしておく 上場前は、株主数を機械的に減らすことより、株主名簿、連絡先、取得経緯、契約、反社会的勢力との関係、実質株主を説明できる状態に整えることが重要です。株主が増えると、株主総会の招集、株主名簿管理、本人確認、同意取得等の負担が増えます。ただし、金融商品取引法上の「募集」に該当するかは、既存株主数ではなく、原則として勧誘の相手方数や勧誘方法等で判定します。「株主が50名以上なら公募」という理解は正確ではありません。募集・私募の判定や届出要否は、発行条件を確定する前に弁護士・証券会社へ確認します。 連絡が取れない株主は致命的になる 創業期に小口の資金を知人・親族から集めた結果、株主が数十人規模になっているケースがあります。問題は、連絡が取れない株主が1人でもいると、その後の資本政策の実行が滞ることです。株式を買い取ろうにも交渉ができず、上場審査でも株主の確認が求められます。「少量の株式を残しておくのか、それとも基本的にはすべて整理するのか」を、早い段階で方針として決めておく必要があります。 反社会的勢力のチェックは避けて通れない 近年、上場審査における反社会的勢力に関するチェックは非常に厳しくなっています。これが原因で上場できないケースも見られます。上場申請時には、反社会的勢力との関係がないことを示す確認書の提出が求められます。株主・役員・取引先などについて確認が必要になるため、知人の紹介で誰が入っているか分からない株主構成は、それだけでリスクになります。「この株主が反社会的勢力ではない」と言い切れる状態を作っておくこと。これは資本政策の設計段階から意識すべき事項です。n-1期までには体制を整備し、運用しておく必要があります。 ストックオプションの発行タイミング 公開前規制を踏まえると、ストックオプションの発行時期は次のように考えるのが実務的です。理想はn-3期以前:継続所有規制がかからず、企業価値も比較的低いため行使価額を低く設定できます。受け取る側のメリットが最も大きくなります。n-2期前後:対象となる株券等の移動は記録・開示の範囲と価格根拠を確認します。発行自体が一律に禁止されるものではありません。基準事業年度末の1年前の日以後:一定の第三者割当等について継続所有の対象・期間を最新規則で確認します。つまり、採用のたびに場当たり的に発行するのではなく、上場時期から逆算して発行計画を立てる必要があります。最初にプールを確保しておき、規制のかからない時期に計画的に配分していく設計が有効です。 逆算のスケジュールを引く 以上を踏まえると、資本政策のスケジュールは次のように逆算できます。n-3期以前:事業計画と資本政策の策定、監査法人の選定、ショートレビュー、主幹事証券会社の選定。資本政策上の大きな異動は、この時期までに完了させておくのが理想です。ストックオプションの発行、株主構成の整理、共同創業者との持分調整なども、ここで済ませておきます。 n-2期:会計監査への対応、内部管理体制の整備、関係会社の整理を進めます。株式等の移動は、相手方、取引類型、記録・開示の対象、価格根拠を事前に確認します。n-1期:内部管理体制の運用実績を積みながら、上場申請書類の作成を進めます。期の後半からは主幹事証券会社の引受審査が本格化します。一定の第三者割当等について、継続所有の対象・期間を最新規則で確認します。 n期(申請期):取引所審査、有価証券届出書・目論見書の作成、公開価格の決定。 重要なのは、資本政策の実行はスケジュールの最も早い段階に置くという原則です。事業の準備は後からでも巻き返せますが、資本政策は時間が経つほど選択肢が狭まります。 上場前の資本政策は誰に相談すべきか 上場前の資本政策には、公開前規制、株価算定の妥当性、税務、そして上場審査の目線が絡みます。論点が複数の専門領域にまたがるため、全体を見渡せる相談相手を持つことが重要です。 特に専門家への相談を検討すべきなのは、次のようなケースです。 上場を意識し始めたが、いつ何をすべきか分からない 株主構成に整理すべき先がある(小口株主、連絡が取れない株主など) ストックオプションの発行時期と量を設計したい 株式異動の価格の妥当性を確認しておきたい 共同創業者や初期株主との持分を調整したい 株式異動の価格については、直近調達、事業計画、株式の権利内容、取引当事者、税務上の時価等を踏まえ、意思決定時点の算定根拠を保存します。必要に応じて独立した株価算定書を取得し、弁護士・税理士・公認会計士等の担当領域を分けて確認します。 上場前の資本政策に関するよくある質問 n-2期に入ってから増資してもよいですか? 可能です。ただし特別利害関係者等との異動は開示対象となり、価格の合理性が問われます。第三者割当による増資もⅠの部で開示され、直前事業年度末の1年前の日以後であれば継続所有の確約も必要です。役員や親族が絡む異動は、とくに慎重な設計が必要です。 n-1期にストックオプションを発行できますか? 発行自体が一律に禁止されるわけではありません。ただし、取引所の公開前規制、税制適格要件、権利行使期間、ロックアップ、上場時の行使可否等を確認します。継続所有の対象・期間は割当日、取引類型、申請市場等により個別に判断します。 株主は何人までに抑えるべきですか? 明確な一律上限はありません。人数よりも、株主名簿・連絡先・契約・取得経緯を管理でき、実質株主や反社会的勢力との関係を説明できる状態が重要です。金融商品取引法上の募集・私募は、既存株主数ではなく勧誘の相手方数や方法等で判定します。 上場準備を始める前に、資本政策を作り直せますか? 可能性はありますが、容易ではありません。株式の買い取りには相手の同意と資金が必要で、株価が上がっているほど負担は重くなります。だからこそ、上場を意識する前の設計が重要になります。 まとめ 上場前の資本政策で最も重要なのは、公開前規制がかかる前に、必要な資本の異動を完了させておくことです。公開前規制では、上場前の一定期間における特別利害関係者等の株券等の移動に記録・開示が求められ、基準事業年度末の1年前の日以後の一定の第三者割当等には継続所有が求められます。対象期間と要件は取引の種類や申請市場等により異なります。株主名簿、連絡不能株主、反社会的勢力チェックも早期に整備します。上場を意識し始めたら、まず申請期から逆算したスケジュールを引き、資本政策上の異動を最も早い段階に配置すること。これがIPO準備における資本政策の鉄則です。 IPOに向けた資本政策でお悩みの方は、JSGのお問い合わせよりご相談ください。上場審査の目線と会計・税務の両面から、実行可能な設計をご支援します。
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コラム
創業者の持株比率は何%が正解?株価×株式数で考える資本政策
「投資家に何%まで渡していいのか」——資金調達の交渉で、経営者が最も悩む論点です。 比率を守ろうとすれば調達条件が折り合わず、譲りすぎれば経営の自由度を失う。この綱引きの中で判断を誤らないためには、持株比率が持つ法的・会計的な意味と、比率だけでは測れない価値の考え方の両方を理解しておく必要があります。 この記事では、会社法上の議決権比率の目安、会計上の支配・重要な影響の判定、そして「保有株式数×1株価値」で経済価値を捉える視点までを、投資実務と会計の両面から整理します。 なお、資本政策や資金調達の条件についてご相談されたい方は、JSGのお問い合わせよりご連絡ください。 創業者の持株比率に唯一の正解はない 最初に申し上げておくと、「創業者は何%を持つべきか」という問いに、一律の正解はありません。ビジネスの性質、成長ステージ、必要な資金量によって、適正な水準は変わります。 ただし、判断の軸となる基準はあります。 会社法上の閾値:比率によって株主が持つ権限が変わる 会計上の閾値:出資者側の決算への影響が変わる 上場審査で求められる株主構成:形式基準を満たす必要がある 経営陣のインセンティブ:企業価値向上に責任を持てる水準か そしてもう一つ、そもそも比率を守ること自体が目的化していないかという視点です。順に見ていきます。 持株比率が持つ法的な意味は?会社法上の3つの閾値 50%超|普通決議を左右しやすい水準 議決権の過半数を持つ株主は、通常の定足数と議決権行使を前提に、株主総会の普通決議を成立させられる可能性が高くなります(会社法309条1項)。ただし、実際の決議可否は、定款、出席・議決権行使の状況、種類株式、株主間契約等にも左右されます。 取締役の選任・解任等を通じて経営体制へ大きな影響を及ぼし得ますが、株主が日常の業務執行を直接決定するわけではありません。取締役会設置会社では、業務執行の決定は取締役会等が担います。 外部投資家が議決権の過半数を保有する場合、会計上の子会社に該当する可能性は高まります。ただし子会社判定は、議決権比率だけでなく、財務・営業又は事業方針を決定する機関を支配しているかという支配力基準で行います。経営者の選解任リスクも、定款、役員任期、種類株式、株主間契約等を含めて確認します。 3分の1超|特別決議を阻止し得る水準 「3分の1超」も、重要な境目です。株主総会の特別決議(会社法309条2項)には、次のような事項が含まれます。 定款の変更 募集株式の事項の決定(有利発行の場合など) 組織変更、合併、会社分割、株式交換、株式移転 事業の譲渡等 資本金の額の減少 特別決議は、原則として議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席株主の議決権の3分の2以上の賛成を要します。したがって、全議決権が行使されるなどの前提では3分の1超の反対で成立を阻止できますが、出席状況や定款の定足数・決議要件により結論は変わります。 これは実務上、非常に大きな意味を持ちます。会社が買収される場合、合併や事業譲渡には特別決議が必要になるため、別途投資契約が締結されていなくても、3分の1超を持つ株主の意向に沿わない買収は困難になるのです。 ライバル企業の事業会社が3分の1超を保有していれば、その拒否権を使って買収先を妨害したり、単にそのライバル企業に買収されるのを避けたりできてしまう可能性もあります。事業会社(CVC)から出資を受ける際は、この点を意識した設計が必要です。 3分の2以上|特別決議を成立させ得る水準 全議決権が行使され、定款で要件が加重されていないなどの前提では、3分の2以上の議決権を持つ株主が特別決議を成立させられます。資本政策では、単純な比率に加えて、種類株式、事前承諾事項、取締役指名権等も併せて確認します。 会計上の意味は?支配と重要な影響で判定する 会社法とは別に、会計上の持株比率にも意味があります。とくに事業会社(CVC)から出資を受ける場合に重要です。会計上は、議決権比率のみで連結・持分法の結論を出しません。子会社は支配力基準、関連会社は重要な影響の有無で判定します。議決権20%以上は関連会社判定の重要な目安で、15%以上20%未満でも役員派遣、重要な取引、融資、技術提供等を総合して重要な影響が認められる場合があります。子会社についても、過半数以下であっても契約関係や役員構成等から支配が認められることがあります。 これが何を意味するかというと、投資を受けるベンチャー側にとって、上場企業に準ずるスピードで決算資料を作成し、株主に渡すことが求められるケースが出てくるということです。上場企業の決算に組み込まれる以上、その企業の内部統制に準ずる体制が求められることもあり、成長段階のベンチャーには重い負担になりかねません。 逆に、投資する側の事業会社にとっても、自社の決算が投資先の損益に左右されることは望ましくない場合があります。CVCが「20%未満に抑えたい」と言う背景には、この会計上の理由があることを知っておくと、交渉の見通しが立てやすくなります。 持株比率より大切なこと|「株価×株式数」で考える ここまで比率の意味を見てきましたが、より本質的な視点があります。株主にとっての価値は、持株比率だけでなく、株価を掛けたもので決まるということです。 経済価値は保有株式数と1株価値で捉える たとえば、創業者が80%を持つケースAと、55%しか持たないケースBを比べたとします。一見するとケースAのほうが得に思えます。しかし、外部の投資家が出資することで企業価値が上がるなら、話は変わります。創業者の保有価値は、原則として「保有株式数×1株当たりの価値」で考えます。同じ種類株式・同じ権利内容という前提では「持株比率×株主価値」とも表せます。ケースBの比率が低くても、資金と支援によって株主価値が十分に高まれば、創業者の保有価値がケースAを上回る可能性があります。優先株式の残余財産分配優先権等がある場合は、単純な比率計算だけでは足りません。1%でも多く持つという発想だけで交渉に臨むと、この面積の視点が抜け落ちます。投資家によって企業価値の伸び方が違う さらに考えるべきは、投資家によって企業価値の伸び方が違うことです。「1億円出資するので10%ください」という投資家Fと、「1億円出資するので20%欲しい。ただし人材や取引先を紹介し、一緒に企業価値を上げていく」という投資家Gがいたとします。単純に考えれば、前者のほうが好条件に見えます。 しかし、後者の支援によって企業価値が2倍以上になるなら、創業者の取り分(面積)は後者のほうが大きくなります。つまり、持株比率と創業者の度量のバランスが問われるということです。 もちろん、どの投資家が本当に価値を高めてくれるかは事前には分かりません。ある投資家に投資してもらったら企業価値が増えるなんてことは、事前には分からないのが実際のところです。ですが、比率だけを見て交渉すると、企業価値を伸ばしてくれる相手を逃すことになりかねません。 投資家の組織力と担当チームを見る 投資家を選ぶ際は、ファンドのブランドだけでなく、担当パートナーと支援チーム、意思決定プロセス、投資後支援の実績を確認します。うちのファンドが投資すると企業価値が上がりますよというセールストークがあったとしても、実際にその支援をやってくれるのは特定の担当者です。ですから、投資家を選ぶ際には、その担当者が誰なのか、どこまで関与してくれるのかをよく確認する必要があります。 担当者の異動や退職後も支援が継続するか、社内の専門チームやネットワークを利用できるかも確認します。キーパーソンへの依存度が高い場合は、投資契約上の情報提供、取締役指名、支援内容等を具体化しておくと、期待値のずれを抑えられます。 上場審査から見た株主構成 比率の議論には、上場審査という現実的な制約も関わります。東京証券取引所の各市場には、株主数・流通株式数・流通株式時価総額・流通株式比率といった形式基準があります。たとえばグロース市場では、株主数150人以上、流通株式比率25%以上といった基準が設けられています。 つまり、創業者や関係者が株式を持ちすぎていると、流通株式比率の基準を満たせないことになります。上場直前に慌てて売出しを行っても、条件面で不利になりかねません。一方で、創業者の持株比率が低すぎると、この経営者は本気で企業価値を上げようとするだろうかという疑問を投資家に持たれます。インセンティブが機能する水準は確保しておく必要があります。 安定株主は誰か? 日本では、経営者が安定的に資本を持つ必要があると考えられることが多く、社長単独でなくても、役員の合計でかなりの比率を持つ設計が採られることがあります。ただし、この安定株主という発想には注意が必要です。 たとえば2人で起業し、社長が6割、副社長が4割の株式を持っていたとします。この副社長を安定株主だと思っていたところ、突然「やっぱり退社する」と言い出すことがあります。株価が上昇していれば、その4割を買い取るのは資金的にも簡単ではありません。 もちろん良好な関係が続く場合もありますが、ケンカ別れの可能性はゼロではありません。共同創業者が退任した場合に株式の一部または全部を返還してもらう契約(創業株主間契約)を、あらかじめ結んでおくという実務もあります。安定株主だと思っていた株主が、いつのまにか安定株主ではなくなっていた。資本政策の失敗として、決して珍しくないパターンです。 海外事例は前提条件をそろえて比較する シリコンバレーでは、創業者の持株比率が日本より低い状態で上場するケースが多いといわれます。創業者といっても公開時には10%程度といった話も耳にします。しかし、この数字をそのまま日本に当てはめるのは慎重であるべきです。理由は2つあります。 資本市場の構造が違う:米国では個人金融資産の多くが株式・投信・年金といった形でリスク資産に配分されており、社会全体としてリスクマネーが供給される構造があります。一方、日本では個人金融資産の過半が預貯金に置かれ、銀行を経由して資金が流れる構造が長く続いてきました。 プロ経営者の層の厚さが違う:米国では他社を経営した経験のあるプロ経営者の層が非常に厚く、創業者が早い段階で経営を渡すことも珍しくありません。日本では、創業者が基本的に一生自分で経営を続ける覚悟が必要になる場面が多く、その分、安定した比率を保つ必要性は高くなります。 海外事例を参考にする場合は、種類株式の権利、議決権構造、調達回数、従業員向け株式報酬、上場市場、経営者交代の慣行等をそろえて比較します。国別の平均値だけから、自社に必要な創業者比率を決めることはできません。 持株比率の設計は誰に相談すべきか 持株比率の設計は、会社法、会計、税務、上場実務、そして投資家との交渉が交差する領域です。とくに専門家への相談を検討すべきなのは、次のようなケースです。 初めて外部から本格的な資金調達を行う 事業会社(CVC)から出資を受ける(会計上の閾値や事業上の利害が絡む) 共同創業者との持分を整理したい 上場を見据えて株主構成を組み直したい 提示された投資条件が妥当か判断がつかない 相談先を選ぶ際のポイントは、投資家側の論理を理解しているかです。持株比率は投資家との交渉の産物であり、投資家がなぜその比率を求めるのかを理解していなければ、実効性のある設計はできません。JSGでは、公認会計士としてバリュエーションや監査に携わりながら、ファンドマネージャーとして実際に投資判断を行ってきた立場から、資本政策の設計と資金調達の交渉をご支援しています。ご相談は、お問い合わせよりお気軽にご連絡ください。 持株比率に関するよくある質問 創業者は50%超を維持すべきですか?維持できるならそれに越したことはありませんが、必須ではありません。50%超を守るために調達額を抑えた結果、成長が鈍化しては本末転倒です。会社法上の閾値を理解したうえで、必要な資金と成長のスピードを踏まえて判断すべき論点です。 投資家に3分の1超を渡すのは避けるべきですか? 慎重に検討すべきです。3分の1超を持つ株主には特別決議への拒否権が生じ、将来のM&Aや組織再編がその株主の意向に左右されます。とくに事業会社(CVC)の場合、事業上の利害が絡む可能性も考慮する必要があります。 共同創業者との比率はどう決めるべきですか? 貢献度に応じて決めるのが基本ですが、あわせて創業株主間契約の締結を検討すべきです。退任時に株式の一部または全部を返還してもらう取り決めがないと、後から買い戻すのは資金的にも交渉的にも困難になります。持株比率が下がっても問題ないケースはありますか? あります。出資によって企業価値が大きく伸びるなら、比率が下がっても保有株式の価値(株価×株式数)は増えます。重要なのは比率そのものではなく、その投資家が企業価値をどれだけ高めてくれるかです。 まとめ 創業者の持株比率に唯一の正解はありません。判断軸は、会社法上の決議要件、種類株式・株主間契約、会計上の支配・重要な影響、上場時の流通株式、将来の希薄化、経営陣のインセンティブです。比率の目安だけで結論を出さず、前提条件を資本政策表と契約で確認します。 同時に押さえておきたいのが、経済価値は原則として「保有株式数×1株当たりの価値」で捉えるという視点です。ただし、優先株式の権利差や希薄化を考慮する必要があります。投資家はブランドだけでなく、担当チーム、組織的支援、投資後の実績を確認して選びます。 資本政策の条件でお悩みの方は、JSGのお問い合わせよりご相談ください。投資家側の論理と会計の両面から、実行可能な設計をご支援します。